妄想と現実の境界線

お兄様の声でお兄様は笑っていらっしゃいました。まるで嘲笑う様に。
　お兄様の声。お兄様の姿。お兄様の仕草。
お兄様。お兄様。お兄様…おにいさまはどこ？ナナリーを守ると言って下さったお兄様。ナナリーには嘘は付かないと言って下さったお兄様。お兄様は何処ですか？ナナリーは此処に居ます。お兄様のお帰りをずっと、ずっとお待ちしております。ですから…おにいさま。
　何処にいらっしゃるんですか？
お兄様にそっくりな方がいらっしゃっているんですよ。お兄様はもうナナリーの元には帰ってこない、なんておっしゃるんです。ナナリーはそんな事信じません。お兄様はナナリーの元へ必ず帰って来て下さるんですよね。ナナリーは嬉しいです。ですから早くナナリーの元へ帰って来て下さい。そしたらもう二度とお兄様をお一人になんてさせません。ずっと、ずっとナナリーと一緒に居るんです。ナナリーの傍に。ずっと。ずっと。

　灰色の錬金術師と黒の皇子が手を組んだ。
灰色と黒。合い居れない存在。至上とした存在を取り戻す為に。壊れた人形。奪われた愛しい人。
裏切りの騎士が戦場を駆ける。
忌々しい事だと笑った黒の皇子。灰色の錬金術師は愉快気に笑う。だからこそ裏切りの騎士、なのだと。











　　離れることはない
　　　　　おにいさま

 

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