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小さな恋の詩2( 初ツナ)

過ぎ去る時間の分だけ何かを無くしていく様な錯覚に陥ったのは最近の事だ。
否、もしかしたらもっと前からだったのかもしれない。
曖昧な事など何時もの事だ。
ふっと気が付けば季節は移り変わり、横暴な小さな家庭教師の役目はほぼ完了を迎えた。あと残す事と言えば、日本で出来ることはない。
急激に気温が下がり、冬の到来を知らせた。
もっぱら横暴で俺様な家庭教師から渡米の言葉を告げられた時には何の感情も沸かなかった。予め決められていた事とは言え、年がら年中行方不明だった父親と同じ職業に就くことになろうとは思いもしなかった。
しかもそれが遠縁に当たるじい様の跡目を継がなければならないのだから何の因果だろう。
年の離れた従兄はじい様の跡目に執着していた。
否、違う。
跡目などどうでも良かったのだ。ただ周りに認めさせられればそれで良かったのだろう。
信じていた血の繋がりを否定された瞬間から、従兄の中の何かが零れ落ちた。それ自体を従兄自信気が付いていなかったのが何ともお粗末な話で、否応にも平凡な日常を壊された此方の身としては実にはた迷惑な話だ。
渡米の日程は精密に練られ、じい様との間で奔走していた家庭教師のイキイキとした顔は、今まで一緒に暮らした中では実に感情的な表情に思えた。
愉快犯的な短所を合わせ持つ家庭教師の悪癖が出なければいいのだが、きっと願うだけムダなのだろう。
深いため息が白い息となって吐き出される。
冬の季節は始まったばかりだ。まだ見知らぬ土地に思い馳せるのはまだ早い気もするのだが、何故だか胸がざわめく。
これは期待とも不安とも言えたが、どちらでもない気がする。
不思議な胸の高まりを感じながら降り積もる雪を見上げた。
きっと明日は一面の銀世界が広がっていることだろう。
少しだけ口許が綻んだ。

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