妄想と現実の境界線

原因究明を最優先に物事は進んだ。
結局人間と言う生き物は他人の不幸より我が身が可愛いのだと言うことを証明してくれた政府のお偉方に感謝しなければならいだろうか。これで躊躇い無く殺せるというもんだ。
　事の発端は一体何だったのか結局の所誰も知らない。気が付いた時には政府高官によって世界各国に声明を出されていた。
それを見た国民は誰もが思っただろう。見捨てられた、と。
実際見捨てられたのだが、現実味のないブラウンカン越しの政府の声明は実感こそ湧かないが漠然とながら国民の不安を見事に煽ってくれたからなおさら質(タチ)が悪い。
　終始無言を通り越して興味の欠片さえ見せなかった片割れの男は実に個性的な髪型をしている。この個性的とも独創的とも言われる様な髪型を目にするまで知り合いのヤブ医者の言葉を疑ってい自分を殴り倒してやりたい。じゃなきゃこんな薄気味悪い所にわざわざ足を運ぶことはなかったのだ。
　チラリと向けた先にうっすらと口元に笑みを浮かべた男が不気味だ。
交渉はコチラが優位とは言え、直ぐにでもこの場を立ち去りたい。むしろ片割れの男を視界からいますぐ消してくれ。頼むから。
微妙な空気が鎮座する室内は、対面に堅気じゃない男との熾烈交渉が続いていた。
そもそもこのご時世だ。何をするにも金がものを言うからこそ資金には限度額が必ずある。その中で如何に交渉し、出資を控えるかが勝負だ。
片割れの男は実に胡散臭いが交渉人である。
しかも一流の言葉が頭につく交渉人であるから厄介極まりない。

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